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第5章

 

さっそく僕は中心街へと向かって行った。


先に進むにつれて、人間の数も増してきた。うっかりしてたら踏み潰されてしまう足の数だ。進んでいる道端だって人間で一杯だ。人間を避け、自分の進めるスペースを探しては進み、なんとか、先に進む。猫にとっては行きづらい道のりだ。けれど、ここまで来たからには決心したのだから、「行くしかない」と思った。


まだ足を踏み入れたことのないその先は、建物の明かりが多く照らされていた。

 

四方向の道から、建物の大きい入り口からも、いたる所に人間、人間、人間。数えきれないし、数えようとも思わないが。


中心街に着いたのだ。


僕は道端から上を見上げた。建物の明かりが綺羅びやか……とは言えなかったけれど、大雑把にキラキラと街を照らしていた。


人間にとっては、建物が明るいなんて事は気にしないと思う。けど、僕にとっては思い出に残る。こんな経験は今までに無かった。


人間は確かに猫から言わせれば「図々しい奴」かもしれないけど、こんな美しい光景を作る事が出来る。ガガの言うとおり悪い奴ばかりじゃない。


上を見上げているうちになんだか眠くなってきた。何処か横になれそうな場所はないかと先に進んだ。


ふと、人間の多く行き交う建物の入り口の方を向いた。


堅そうな四角形の台の上に僕よりふたつまわりより大きい動物が座っていたのだ。僕は台の上に向かって、足と腕に力を込めて飛び乗った。


台の上に着地し、僕の体格と似ている全身土色に似た茶色い動物は、僕の事は気にしていない様に見え、威風堂々と前だけを見つめていた。


「ねぇ」と僕は、全身茶色に染まっている動物に一声掛けてみた。


動物に返事はない。僕のことを完璧無視状態だ。


「ちょっと疲れたから君の懐借りるよ」


僕は動物の腕と腕の間に転がり込み、腕を枕みたいな感じで寝そべった。


「綺麗だね」


動物にそう言っても返事は返ってくる様子はなく、それでも、この動物もきっと「綺麗」と思っている(僕の独断だけど)だろう。


目を閉じる前に、僕の視界から見える、ある建物のてっぺんに飾られている、二つの針が付いて記号が並べられている円い飾りを見つめて、目を閉じた。

 

 

つづく